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尾陽雑記

木賀崎長母寺〈◯中略〉 一万歳といひて今世に有、いんなひ(○○○○)ともいへり、其根元おたづぬるに、長母寺の領、むかしは方々に有て、此あたり味鏡といふ村おはじめ、知多郡木田大高の辺に至迄、所々寺領すとなん、然るに味鏡に、一人の鄙賤有けり、世に過わびて、ある年のくれに無住にまいりてなげきければ、あはれみて仏法のはじめお目出度作りて、年の初めにいひめぐりて、物もらひてよすがにせよと、教たまひしなり、〈◯中略〉其外あやしきうらかたおも、かのものヽ世すぎの為に、つたへおしへたまふとかや、その末々はびこりて、大高の辺はさらなり、今は他国迄此万歳〈いんなひとも雲〉の事多くなれり、剰となへうしなひて、あらぬかたこと共申侍るとなん、