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尾張名所図会
前編六知多郡
万歳〈薮村に、森福大夫、松福大夫、米福大夫、加木屋村に、上羽大夫等の数人ありて、三河院内万歳の同流なり、抑人皇八十九代亀山院の御宇、同国山田郡木け崎長母寺の開山、無住国師のおはせし時、其寺領たりし味碗(あじま)村に有助といへる者、其身貧しければ、年の初には家々に来り、福が来るの、宝が涌のと、うたひ舞などして、物お乞ひあるきぬ、国師これおあはれみ、本朝に仏法の弘まりし事なんどおまじへて、寿き諷ふべしとて、自ら容歌お作りあたへらる、然るに知多郡寺本村も、当山の領地たれば、相百姓ゆえ、是お伝習しけるが、後世公事起りて、味碗万歳は府下へ来らず、隻其地頭計りへ、今も来りて舞ふとなん、知多の万歳は、今府下一般お舞ひあるけば、知多郡万歳とのみ通称す、すべて五万歳とて、唱歌五通りあれど〉〈も、辞長ければこヽに洩しつ、〉