[p.0887]
諸国図会年中行事大成
一正月
五日、千秋万歳、〈◯中略〉 今日京兆尹の御庭にも来てつとむ、京都の町々おも廻る、其体烏帽子素襖お著すもの、二人或は三四人、扇お開き祝語お唱ひ、内一人は鼔おうつてこれお和し、若夷誕生の体お舞ふ、京都に来るものお大和万歳といふ、又参河国に一派あり、三河万歳と称す、或説に雲、大江定基博識宏才にして、仏道にも疎からず、正月の祝も目出度事はふりたりとて、我領分の百姓に教へ、仏法東漸の歌お唱はせ、春の始より世累お忘るヽ媒とすと雲々、又美濃尾張辺の一向宗多き所には、鼔おうち、親鸞聖人の伝記お唱ひ来る、是は津島万歳とて、尾州津島より出る、又九州辺の万歳も、其体大和万歳に等しくして、家別に来らず、但往還道お歩行て祝語お唱ふ、家々の門口に、旧年刈収る稲一鎌お出し置くおとりて帰る、これお福わかしといふ、又江戸にては幸蔵と雲へる者従ひて戯言おなす、