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嬉遊笑覧
八忌諱
初夢、〈◯中略〉今江戸にて元日おおきて、二日の夜とするものは其故おしらず、晦日は民間には事繁く、大かたは寐るものなし、この故に元日の夜はいたくこうじていぬめれば、さるまじなひ事などは、麁略にしたるよりの事にや、〈◯中略〉浮生が滑稽太平記に、試毫評判の条、回禄已後麁相なる家居に越年おして、せめての祝儀にや、去年たちて家居もあらた丸太哉〈卜養〉たからの舟も浮ぶ泉水、〈玄札◯中略〉又年越の夜も敷ことあり、故に冬の季ともいひたり、然るに二つあるものは、前するお季に用ゆ、新年おとヾむためなれば、此理近かるべしといへるもあり、されども玄札老巧たり、既に脇にする時は、如何にも春たるべしといへるも有けり、〈回禄已後は万治元年なり〉これおみれば江戸にはそのかみより、元日か二日お用ひしなり、両日定まらざりしにや、船の絵内裏より公卿に賜るは二日なりとぞ、かヽる故なるべし、