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改正月令博物筌
十二月
節分〈◯中略〉 貘枕〈貘の札、白沢といふ獣の事也と、白楽天はいへり、節分の夜、貘の図お画て枕とすれば、悪夢お見ず、諸の邪鬼お避る事妙也、俗に貘は夢お喰ふ獣也といふもいはれあり、(中略)五法水にて写したる、此御像お家に所持すれば、時疫やく病うつらず、狐狸悪気、其外諸の怪しきもの、災おなす事なし、万一怪しき事あるか、又は怪しき病人あらば、此白沢の像の前にて呪文お唱ふれば、れいげん神の如し、近世は大坂吉文字屋市左衛門といへる本屋にて、五法水にて写したる此白沢の像お売る也、世間にある守札と違ひ、渉世録其外諸書に出て、正しき事なり、余も此像お家にかけて、凶事の吉事となりたる事多し、依之諸人の為こヽに記す、〉
 ◯按ずるに、貘枕の事は、器用部枕篇に詳なり、