[p.0896]
文朝画談
宝船の事〈◯中略〉 宝船古絵本、蜷川相摸守家蔵にあり、これは其先祖蜷川新右衛門親長入道標が写せる図なり、〈新右衛門、其頃京都将軍政所代なりし、其後御当家御奉公雲々、〉裏書に雲、此船写はせちぶんの夜書せられ候御船なり、相阿弥筆写也、恵林院御代に、進上物の内、帰山祐心母かた祖父巽阿弥進物也、抑もたせられ候淵玄抄の書お拝見申度候、古絵本お見て、光源院殿様御代貞孝様被仰付、帰山調進申候、公方様妙覚寺に御座候時、御船不足の事あり、めし使被下、かすがの御局様の御えんにて、五艘かきたし、御連枝御所々々さまへ上候、覚候事此通りしるせり、