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守貞漫稿
二十六
正月二日、三都とも売人は、今暁丑或は寅の刻より初売(○○)と唱て、行人多き街店は品物おならべ、蝋お点して売之、又京坂は諸品物お得意の家に携へ行て売之、蓋日用の品物のみ也、〈諸品物お中にして、両人にて担之行く、其詞曰、はあよい〳〵 よひ〳〵 と呼行く、〉又大坂の菜蔬買は、今暁水菜〈一名壬生菜、又京菜、〉お売り巡るお例とす、 江戸にては日用の品物お売る、小賈は専とせず、大賈は伝へ売る中賈に諸賈物お荷車に積み、僮僕五七人、或は十人、紅の弓張挑灯等お照し、車に副て得意の店に行お例とす、号て初荷(○○)〈はつに〉と雲、初売、初荷とも、天明お限りとすること三都同事、〈蓋京坂日用の品物初売、昔は二日暁のみ、一品二人売来る時は、後来の物お買ざる家あり、故に近年は或は元朝より売之者希に有之、又或は旧冬より初売の分なりと号て強売あり、後世恐らくは、皆元日に売之ことになり行歟、〉