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守貞漫稿
二十六
正月七日、今朝三都ともに七種の粥お食す、 七草の歌に曰、芹、なづな、ごげう、はこべら、ほとけのざ、すヾな、すヾしろ是ぞ七種、以上お七草と雲也、然ども今世民間には、一二種お加ふのみ、三都ともに六日に、困民小農ら市中に出て売之、京坂にては売詞曰、吉慶のなづな、祝て一貫が買ておくれと雲、一貫は一銭お雲、戯言也、江戸にては、なづな〳〵と呼行のみ、三都ともに六日買之、同夜と七日暁と再度これおはやす、はやすと雲は、俎になづなお置き、其傍に薪、庖丁、火箸、磨子木、杓子、銅杓子、菜箸等、七具お添へ、歳徳神の方に向ひ、先庖丁お取て俎板お拍囃子て曰、唐土の鳥が、日本の土地へ、渡らぬさきに、なづな七種、はやしてほとヽと雲、江戸にて、唐土雲々、渡らぬさきに七種なづなと雲、残六具お次第に取之、此語おくり返し唱へはやす、京坂は此薺に蕪菜お加へ粥に煮る、江戸にても小松と雲村より出る菜お加へ煮る、〈◯中略〉或書曰、七草は七づヽ七度、合て四十九叩くお本とす、