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梅園日記

七草爪(○○○) 正月七日七草爪とて、人こヽに必爪きるは、前条にいへる鬼車鳥、人の捨つる爪おとるといふ説あれば、とらせじとて、かの鳥お禳はん料にたヽきつる七草お水に浸し、其水にて爪おぬらしてきるなり、〈日次紀事には、七草おゆでたる湯にて、爪おひたすと雲り、〉かの鳥、爪とる事は、玉燭宝典〈巻十〉に、博物志雲、鵂鶹鳥昼目無所見、夜則目明、人截爪棄也、此鳥捨取、知其吉凶鳴則有殃也、〈今本博物志此事なし〉北戸録巻上に、陳蔵器引五行書、除手爪埋之戸内、恐為此鳥所得、其鵂鶹即姑獲鬼車鴟鵂類也、〈嶺表録異にも亦此説あり〉と見えたるにて知るべし、さて正月ならぬ時も、小児の爪はみだりに捨ぬなり、清朝にてもしかり、盧文弨が鐘山札記に、淮南子高誘注雲、鴟鵂謂之老兎、夜則目明、合聚〈淮南子各本拾聚に作れり〉人爪、以著其巣中、今人翦小児指甲、率置隠処、不欲棄擲庭院間、則亦因高説以為戒耳とあり、