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幕朝年中行事歌合

八番 左 御具足祝
あなたうとけふの睦月の十日あまりひとたびおがむ神のきせなが〈◯中略〉
御具足祝は、むかし東照宮の召させ給ひし御物の具お、黒書院の床に飾て、祝はせ給ふ也、金の歯朶の立ものヽ御冑に、黒塗二枚胴の御具足、御陣刀差添等迄、みな戦に臨ませ給ひし時、帯させ給ふ御物也、革の柄に御手沢の残りしなど、かしこきまでおぼゆ、やがて出御有之御祝あり、御膳撤しぬれば、溜詰、譜代の大名五人づヽ出て拝賀す、夫より西湖の間の廂まで成らせ給ひて、高家、雁の間、菊の間大名、及び司々の拝賀おうけらる、此日宿老に具足のもちお賜ふ時、番頭の輩相伴たり、その余諸大夫布衣の輩、山吹の間の外、雁の間、きくの間にかけて並居つヽ是お給ふ、もとはむつき二十日に、此事有しに、御三代の君の御忌日たるにより、承応元年より改めて、十一日にいはヽせ給ふとぞ、