[p.0924]
諸国図会年中行事大成
一正月
十五日粥杖〈又粥木とも〉 今日粥杖とて松枝柴などにて、女の腰お打なり、〈◯中略〉信濃、飛騨、三河等の国には、染樛木おもつて、其長さ一尺二寸許に切、上下より削かけて、先の方に左に巻、柳桜の花の如き物お紙にて造り粘て、松煙おもつて熏べ、其花の形お取除れば、其摸様白く木に残る、是お御祝棒と号け、新婦ある家毎に入て、新婦の腰お打、児童の戯なり、又今朝茶竹の五六尺計なるお、半まで五つ六つに割かけて、染樛木の枝二三寸廻りなるお、長五六寸に切、件の割たる竹の先にさし、家毎に門口の軒端に、二本充これお指す、是おほんだるといふ、是豊年の祝ひ、穂垂の祝儀とす、京師近郷は、此頃児童の戯れに、橙お糸にてくヽり、通行の婦人の腰お打、皆粥木の遺風なり、