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枕草子

十五日〈◯正月〉は、もちがゆのせくまいる、かゆの木ひきかくして、家のごだち女房などのうかがふお、うたれじとよういして、つねにうしろお心づかひしたるけしきもおかしきに、いかにしてけるにかあらん、うちあてたるはいみじうけうありと、うちわらひたるもいとはへばへし、ねたしと思ひたることはり也、こぞよりあたらしうかよふ、むこのきみなどのうちへまいるほどお、こヽろもとなく、ところにつけて、われはとおもひたる女房ののぞき、おくのかたにたヽずまふお、前にいたる人は心えてわらふお、あなかま〳〵とまねきかくれど、きみ見しらずがほにて、おほどかにていたまへり、こヽなる物とり侍らんなどいひより、はしりうちてにぐれば、あるかぎりわらふ、おとこ君もにくからずあいぎやうづきてえみたる、ことにおどろかず、かほすこしあかみていたるもおかし、又かたみにうちて、おとこなどおさへぞうつめる、いかなる心にかあらん、なきはらだち、うちつる人おのろひ、まが〳〵しくいふもおかし、内わたりなどやむごとなきも、けふはみなみだれてかしこまりなし、