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狭衣

十五日〈◯正月〉には、わかき人々こヽかしこにむれいつヽ、おかしげなるかゆづえ引かくしつヽ、かたみにうかヾひ、又うたれじとよういしたるすまひおもはくどもヽ、おの〳〵おかしう見ゆるお、大将殿は見給ひて、まろおあつまりてうて、さらばぞたれも子はまうけん、誠にしるしある事ならば、いとふ共ねんじてあらんなどの給へば、みな打わらひたるに、いとヾいまはさやうなるあぶれものいでくまじげなる世にこそと、うちさヾめくもありけり、わか宮ぞちひさきかゆづえお、いとうつくしき御ふところよりひき出て、うち奉り給へば、うちえみ給ひて、あなうれしや、宮のあまりかたじけなくおぼえ給ふに、わたくしの子まうけつべかりけりと、かひ〴〵しくよろこび申し給ふもおかし、