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諸国図会年中行事大成
一正月
十五日 爆竹并吉書揚〈◯中略〉 洛中家々今暁竹お立、昨日迄飾たる注連飾おたき吉書お焼く、其紙の灰空に飜るときは、手跡上達すと雲、此時口々にとんど左義長と拍す、此火おもつて、今朝の小豆粥お煮、又餅お焼き食ふ、是お菱葩ほこらすといふ、又其爆す所の焦余る竹お、厠の内に挿ば、其家疫なしと、又其灰お屋敷の四面に散せば、蛇近づかずと雲、 大坂にては昨日より家々の注連飾お取て、河辺にこれお焼く、皆児童の戯とす、田舎にては高さ二三間の爆竹お作り爆す、摂州兵庫近郷には、昨夜土産神の社壇に、一村の者及び往還の旅人お引止め、灯火お消し、男女闇中に入乱れて一夜お明す事、大原の雑居寐に等しく、今朝大きなる爆竹お建て、西方へ引合ひ、引勝たる方は猟よしとて、大に悦ぶ事網引と等し、