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建武年中行事
七日〈◯正月〉は、白馬節会なり、このひはことにいそがるれば、まへの日より官に仰て、南殿の御装束とヽのへたり、記文にゆづりて、御装束の様などは元日にもしるさず、さりながらしつらひの様はかヽず、猶おぼつかなき事ありぬべければ、あら〳〵しるすなり、御帳にかたびらおかけ、もやのかべしろなどつねのごとし、御帳は三方あけて、〈すみのはしらにかたびらおゆひつく、〉うしろはたれたり、うちに平文の御倚子おたつ、そのまへに火びつおすへたり、御いしの左右〈前へよせて〉に机おたつ、かうらいのおほひあり、左には剣璽おおかるべし、右には式のはこお置べし、又とヾまる文は、右の机におかるべし、火びつの前に御だいばんおたつ、〈よこざま〉その南に二の御だいばん〈たてざまなり〉帳台のうへに北のはしおかけて、南おば、べちのだいにてこれおおく、みな両めんのおほひあり、大なるかねのうつは物にくだ物お入て、一二の御台に、おの〳〵これおおく、そのまへに左によせて、うねべが草とんおおく、もやのひんがし三間に、四尺の台盤おつヾけてたてならぶ、末には八尺のだいばん一脚たつ、〈たつみいぬいざまに、いさヽかゆがめてたつる也、北辰にかたどるともいふ、〉下にこんの布おしく、うへにくだ物おすへならぶ、はしかいのだいおく、はしにこれおおく、奥端に兀子おたつ、親王大臣のれう両めんのおもて、納言はみどりのおもて、参議の座はながしやうじなり、御帳のうしとらの方に、五尺ばかり東によせて、大宋の屏風おたつ、内弁この所にて奏お内侍につくるなり、御帳の西北のはづれに、通障子お二脚西ざまへたてならぶ、その内〈北に〉内侍の座おまうく、ひさしの西二間に酒台おおく、南階の東西に左右近の胡床おたつ、宣命のへん、尋常の版、つねのごとし、へんの東西に位記の案おたつ、〈東式、西兵、上階あらば式二〉参列のへう、所々のまん、胡へいのたてやうなどつねのごとくなるべし、南庭に〈みなみ、いさヽか西によせて〉舞台お立たり、〈梅柳お舞台のすみにたつと見えたり〉大臣参議まいりぬれば、加叙あらば先これおかきいれらる、奉行くら人下名おもちて大臣にくだす、大臣参議に仰てこれおかき入しむ、やう〳〵人々参あつまりて、外記しろつかさお申さしむ、いましめたりやと仰すれば、いましめて候よしお申、これよりさき諸司おとふこと常のごとし、外任奏くだされて、御後に出御あり、剣璽は先つくえにおく、式筥もおなじ、蔵人位記のはこお内弁座のまへの台盤のうへにおく、式うへ兵下、〈式二あれば、二おうへにおくべし、〉内侍位記の筥の上なる下名おとりて東階にすヽむ、これよりさきに諸卿外弁につく、内弁宜陽殿の壇上のへんにたつ、御後に出御のよしお聞て、近衛の陣はひくなり、内侍東階に出ぬるおみて、内弁はしのもとにすヽみて下名おたまはる、内侍かへり入、内弁宜陽殿の兀子につきて、ちさわらはおめす二声、内竪すヽむ、仰雲、のりのつかさ、つは物のつかさめせ、式兵丞〈六位蔵人つねにさぶらふ〉すヽみて内弁のまへにたつ、〈武官弓おもつ〉内弁のヽつかさおめす、称唯してわしりすヽみて、ひざまづきて下名おたまはり本列にかへる、つはものヽつかさ又おなじ、二省の丞ともにしりぞく、内侍又東階にすヽみてめす、大臣称唯して軒廊よりねりすヽみて、謝座おはりて堂上にのぼる、大臣ちさわらはおめす二こえ、内竪さくらの木のもとにすヽむ、仰雲、のヽつかさ、つはものヽつかさめせ、二省の輔代、桜の木の下にたつ、めしによりて式部輔代〈五位〉堂上にすヽむ、式のはこおたぶ、二あらば帰りまいれといふ、輔代丞にはこおもたしめて又帰りまいる、又一のはこお給、又つはものヽつかさめす、輔代まいりてはこお給事さきのごとし、二省はこお丞にもたせて、おの〳〵案におきてしりぞく、内弁開門仰せ、闈司座につき、とねりめすこと元日のごとし、諸卿謝座謝酒おはりて、堂上の座につく、内弁座おたちて、叙位の宣命おとりて、かへりのぼりて内侍につけて奏聞す、返給て杖おかへして帰りのぼる、上階あるときは中納言の中に宣命使お仰す、しからざれば参議これおつとむ、大臣参議に仰て叙列お催す、式兵輔代叙人お引て前庭にすヽむ、輔代は案のもとにたつ、叙人は標にたつ、宣命使めしによりてすヽみて宣命おたまはる、大臣已下下殿、宣命使こんらうより出て、曲折の揖して、西にむかひて練て、案のもとおへて〈式案二あるあはひなり〉へんにつく、宣制のやう、元日にみえたり、但後のたびも二拝也、叙人は拝せず、宣命使かへりのぼりて、大臣已下おなじくのぼる、式兵の叙人、おの〳〵案の下にすヽみて位記おたまはる、輔代これおたぶ、案の下にひざまづきて給て、いさヽかひらきみる、揖してしりぞく、〈いうありなしせち〳〵あり、式左にめぐり、兵右にめぐる、〉おの〳〵新叙のへうにたちあがる、〈もとは三位のへうに立たりつるが、二位にならば、二位のうへに立あがるなり、〉みなたまはりはてヽ輔代しりぞく、二省の叙人たがひに見あはせて、馳道にすヽみて一同に拝舞す、次第にしりぞく、大臣已下下殿しておの〳〵拝舞す、〈これお親族の拝と雲、本儀は加階給たる人々のよせある人々悦心なり、今のよはみな立也、立様宣命の拝のごとし、〉左右の大将下殿して、軒廊にて白馬の奏おとる、御監しよおくはふ、次将これおとりつぐ、随身に仰て文お杖にはさましむ、左右ともにすヽむ、左もし大臣ならば、右東の廂にとヾまりて立、大将一人あらば、左右ともにとる、大将候はずば、内弁これおとる、御らんじて西の机におかせ給也、白馬わたる、先左、つぎに右、かみ、すけ、おの〳〵わたる、その人なくば代おさだめらる、次に御膳まいる、三節一こん、くず、二献みきの勅使、三こんおの〳〵元日におなじ、楽は女楽也、三献はてヽ、内教坊別当下殿して〈別当大納言の中にあり〉奏おとる、次将とりつぐ、奏御まへにとヾまる、白馬奏のごとし、近衛の楽人ゆみばどのヽへんにて楽お奏す、舞妓舞台にのぼる、五曲なり、〈皇帝、桃李花、喜春楽、〉楽はてヽ宣命見参おそうす、元日のごとし、せんみやうお宣命使にたび、禄法お大弁にたぶ、宣命はてヽ、群臣禄所にむかふ、禄おとる大弁の宰相ろく所につく也、入御ののち、白馬中殿の前おわたる、神仙無名門おとおりて東庭おわたる、先ねりおとことかやいひて、七度庭おめぐる、近衛官人どもなり、うへのおのこども、小板敷のへん長橋などにて馬おうつ、そのゆへおぼつかなし、中宮東宮にもおなじくまいる、節会の程、北の陣にてけんひいし雑犯おたヾす、