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枕草子

ころは正月、〈◯中略〉七日は、〈◯中略〉白馬見んとて、里人はくるまきよげにしたてヽ見にゆく、中の御門のとじきみひきいるヽ程、かしらども一ところにまろびあひて、さしぐしもおち、よういせねば、おれなどしてわらふも又おかし、左衛門のぢんなどに、殿上人あまたたちなどして、とねりの馬どもおとりて、おどろかしてわらふお、はつかに見いれたれば、たてじとみなどの見ゆるに、とのもりづかさ女官などの、ゆきちがひたるこそおかしけれ、いかばかりなる人、こヽのへおかくたちならすらんなどおもひやらるヽうちにも、見るはいとせばきほどにて、とねりがかほのきぬもあらはれ、しろきものヽゆきつかぬところは、まことにくろき庭に、雪のむらぎえたる心ちしていと見ぐるし、馬のあがりさはぎたるもおそろしくおぼゆれば、ひきいられてよくも見やられず、