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年年随筆

江戸にて、二月八日、十二月八日、芋、菎蒻、小豆などおいれて汁おにる、これおおこと汁と雲、二度ともに事はじめ也とも、事おさめなりともいひて、さだかならず、尾張にては、二月は不沙汰なり、骨のなき物おくふ事なりといふ、むじつ講(○○○○)とて、無実の難おまぬかるヽ義也といひ伝へたり、臘八は釈迦成道の義なりといふは附会なり、おことヽは何事ならんと、年比不審なりしお、出雲国日御崎の神職神西左門行䄻が語けらく、出雲にては、十二月十三日に、煤取などやうの正月の事おしそめて、芋、菎蒻、小豆等の汁おくふ、これお事始といふ、さて年神おまつりて、正月廿日に鏡餅お撤却して飯お供す、是お飯くらへと雲、二月一日鱠お供す、是おなますくらへと雲、鱠くらへ七日ありて、八日に年神の棚お取、これお事おさめと雲、十二月と同じ汁おくふといへりき、これにて事とは正月の事なることも、初終もよくわかれたり、