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涅槃は、大円寂の謂にして、二月十五日釈迦入滅の日お指すものなり、涅槃会は、山階寺に行ひしお始として、其後諸寺に之お行ひ、涅槃像の図お懸けて、衆人に拝せしむ、京都千本引接寺の涅槃会は、一種の異例にして、毎春桜花の候念仏お修す、伝へて足利義満の創めし所と雲ふ、又同所大報恩寺等にては、遺教経お訓読して、遺教経会又は訓読会とも雲ふ、又此涅槃は、経に、常楽我浄お涅槃の四徳と雲ふ事あるによりて、興福寺、四天王寺、金剛峯寺等には、之お常楽会とも雲へり、此日民間にては寺に詣で、又炒豆、糕餅等お仏に供するお例とす、