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野山名霊集

常楽会 毎年二月朔日より同十日まで、大楽院に於て、涅槃経の講筵おひらき、十一日には、遺教経お講じ、十五日には、涅槃会お修す、其儀頗厳重なり、中頃亀山院、此会の殊勝なる事お聞召て、宸筆お以、涅槃会の式文お写させ給ひ、其外羅漢遺跡舎利の式おば、当時能書の公卿に仰て、写さしめ給ひ、又大師御作の舎利塔、并に数躯の尊像共に、大師より嵯峨天皇に奉り給ひ、御代々御相伝ありけるお、今般院主信日阿遮梨御帰依によりて、ことごとく寄附し玉ひ、剰備後国太田の庄等お以、涅槃会の料として、これお宛行はる、夫より已来、勅願の涅槃会(○○○○○○)と号するものなり、