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嬉遊笑覧
六下児戯
相摸愛甲郡敦木の里にて、年毎に古びなの損じたるお児女共持出て、さがみ河に流し捨ることあり、白酒お一銚子携へて、河辺に至れば、他の児女もこヽに来り、互にひなお流しやることお惜みて、彼白酒おもて離杯お汲かはして、ひなお俵の小口などに載て流しやり、一同に哀み泣くさまおなすことなり、此あたりのひな、内裏びなは異なることなし、其外に藤の花おかづける女人形多し、おもふにひなお河水に流すは、もと祓除のことによるなるべし、妹背山浄るりに、ひなの道具お水に流すことあるは、作り設しことヽのみ思ひしに、かく似たることもあり、