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五月五日は節日にして、端午と称す、朝廷に於ては節会お行ひ、中務宮内の二省より菖蒲お献じ、皇族及び臣下に薬玉お給ひ、宴お賜ふ等の儀あり、中世以後此儀絶えたれども、猶ほ節日として菖蒲お献ずることあり、薬玉は五綵の糸お以て、菖蒲艾等お貫きしものなれども、後には時花若しくは造花お以て飾れるものあり、又菖蒲お屋上に葺き、或は鬘と為し、枕に用い、之お湯に投じて浴み、之お酒に和して飲む等の事あり、皆邪気お避くるの法とせり、粽も亦此日の節物にして、後世の柏餅は、之に代ふるに似たり、又屋内若しくは庭上に旗幟の類お立て、菖蒲冑、菖蒲刀、冑人形等お飾るも、亦此日の事にして、専ら男児の戯玩に充つ、旧制此日お騎射節、又馬射節と称し、天皇射場に出御ありて、近衛兵衛の騎射お覧るの事は、武技部騎射篇に載せ、又此日競馬お行ふ事は、同競馬篇に載せたり、