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枕草子

せちは 五月にしくはなし、〈◯中略〉そらのけしきのくもりわたりたるに、きさいのみやなどには、ぬひどのより御くすだまとて、いろ〳〵の糸おくみさげてまいらせたれば、みちやうたてまつる、もやの柱の左右につけたり、九月九日の菊お、あやとすヾしのきぬにつヽみてまいらせたる、おなじはしらにゆひつけて、月比あるくすだまとりかへてすつめる、又くすだまは、菊のおりまであるべきにやあらん、されどそれはみないとお引とりて、物ゆひなどしてしばしもなし、〈◯中略〉つぢありくわらはべの、ほど〳〵につけては、いみじきわざしたると、つねにたもとおまもり、人に見くらべ、えもいはずけうありと思ひたるお、そばへたることねりわらはなどに、ひきとられてなくもおかし、