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恒例年中行事
五月
五日 薬玉 是は糸にて赤白の杜鵑花、并艾菖蒲お作り、五色の糸おかけたるもの也、又糸にてあみたる橘の実あり、内に薬お入らるヽと雲、延喜式、凡五月五日薬玉料、菖蒲艾雑花十捧とあれば、むかしは菖蒲艾橘などの薬ものお時節の花にて飾、五色の糸にて調たるものゆへ、薬玉といふ、後世薬物雑花おも糸にて作る故、薬お入らるヽにや、当時御所〈江〉上るは薬お入られず、西宮記に、五月五日、糸所、献薬玉二琉、蔵人取之、結付昼御座母屋南北柱、又五日節会、賜続命縷とあれば、むかしは糸所より調進して、御所にも掛られ、人にも賜りたると見ゆ、今は御出入の職人上るなり、