[p.1168][p.1169]
栄花物語
三十四晩待星
五月〈◯寛徳元年〉最勝の御八講に、うへの御つぼねにおはします、さうぶおみなうちて、やがてさうぶの唐ぎぬ、くすだまなどつけて、ながきねお、やがておまへのみすのまへのやり水にひたして、いでいたるもおかし、麗景殿〈◯後朱雀女御藤原延子〉も、おり〳〵の装束おかしう、細どのにて、ことびはひきあはせて、殿上人など、もの誦しなどしてあそぶ、五日、加賀左衛門、一品宮〈◯後一条皇女章子〉のいではに、
 たもとにはいかでかくらむあやめぐさなれたる人のそでぞゆかしき、といひたりければ、いではのべん、
 へだてなくしらせやせましこヽのへのおろかならぬにかくるあやめお