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日本歳時記
四五月
端午図【図】鄙の童子、今日菖蒲のかぶと太刀おもてあそぶ事も、此祭おまなぶとなり、されば此事、むかしは厚き紙に人形おほり付、薄き板お胄の形にこしらへ、或菰の葉にて馬お作り、或木お鎗長刀のごとくけづりなどして戸外に立侍りしが、近年は風俗美巧おこのみて、木おもつて人馬の形おきざみ、又はりこにして綵色おほどこし、或甲胄おきせ、剣戟おもたせ、戦闘の勢おなさしめて戸外にたて侍る、是おかぶとヽいふ、又紙旗にいろ〳〵の絵おかきて長竿につけ、是おも戸外にたて侍る、これおのぼりと雲、或絹お用るもあり、或は長旒お加えて、是お吹ながしと雲、朔日より五日まで、児童の弄事とす、按ずるに、もろこしにもこれに似たる事侍り、歳時雑記にいたく、端午に都の人天師お画て売、又土にて天師お作り、艾お以て鬚とし、蒜お以て拳とし、門上に置、又艾お採、結んで人の形に作り、門戸の上にかくれば、毒気おさくといへり、〈按ずるに、道家に、後漢の張陵お祖師として天師とす、〉