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諸国図会年中行事大成
三下五月
五日 端五〈又重五〉 今日家々に飾、冑、菖蒲刀、および弓、鉄炮、鎗、長刀、幟等の武器、あるひは武将の人形お飾る、皆木偶師の細工物にして、真の物に非ず、是お俗に男の節句といふて、専ら男児の玩とす、男子は軍陣に出て、武威お逞して国郡お領するお功とす、故に出陣威勢の体おなして、武器おかざる、十一月始て一陽生ず、卦に在ては地雷復、夫より一月に一陽づヽ生じ、四月に至て純陽となり、五月に至り始て一陰生ず、卦に在ては天風逅なり、是陰気陽に逆ひ、地お冒すの節、陰は叛逆の意にして、是お退治するの器お飾るならん歟、〈(中略)今月朔日より男児ある家には幟お立、武者人形、及び諸の武器おかざり、又粽お製して、親族知己の方に贈て祝義とす、粽の製は次下に記す、初生の男子あれば、其親属より諸武器お贈て寿とす、是にはかならず、銀箔おもつて飾たる頭巾お添る、四日より五日に至り、飾置る所の武者人形に、神酒并に粽お供じ奠之、然れ共神祭等の如き、崇敬し如在の礼お致せるにあらず、畢竟児童の遊戯にして、三月雛祭と同じ、夜は灯燭お点じ、〉其体甚壮麗なり、又親戚懇意の人など来集し、宴お設け、其家児の為に詩お賦し、歌お詠じ、或は連俳等、夫々の賀辞お述、興来酒酣に及んでは、吹管弾絃など、時に臨んで盛なり、又下野国の方言に、此兜人形お志賀美人形といふ、