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守国公御伝記

寛政三年九月十三日、正室に男子誕生し玉ひ、上下挙て歓抃限りなく、名お太郎丸君と称し奉りて、乃ち保国公〈諱は定永〉是なり、同月二日侍妾中井氏にも、男子出生し玉ひしが、次郎君と名付玉ひ、〈◯中略〉翌年五月初幟の祝式、旗、弓、鉄砲、長柄の槍お飾り玉ふ、〈其数の多少お以て、嫡庶の等お分ち、菖蒲兜の類は到来に任せて並べ立玉ひ、旗に招き付たれども、世に雲のぼりとは異なれり、後弓鉄砲長柄も、誕生毎に新調すべしと定めらる、武器お増して不虞に備ふべき賢慮なりとぞ、〉