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都の手ぶり
両国の橋
大江戸より本所へわたしたる橋お両国の橋とぞよぶ、〈◯中略〉夏のころは、ことに舟あまたつどひて、いと竹の音、川波にひヾきあひておそろしきまで聞ゆ、げにひろき都の中にも、なぞらふべき所だになく、こよなうにぎはしきわたりになむ、川づらには、葭おあみてへだての垣となし、すのこだつ物あまたならべて、いこふ人ごとに茶おもてあきなふめり、又おなじつらなる仮家つくりて、小弓の射場まうけて、いとなみとするものもあり、髪つがぬる家、舟かす家、もちひ、くだもの、酒うる軒など、所せきまでたちならびたり、