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幕朝年中行事歌合

二十番 右 嘉祥
千代の数敷ならべつヽもろ人の手にまかせたるけふの賜もの
嘉祥は室町の頃より初りしにや有らむ、当家にては代々の佳例となれり、六月十六日両御所大広間に渡御有、二三の間にかけて、菓子ひとくさづヽ折敷にもりて並べおく、其数二ちヾばかりもやあらん、此日両御所には大広間の中段におはします、松の間の中少将侍従の面々一人づヽ出て、板縁に著座あれば、打蚫菓子お御まへに進め、相伴の輩にも出す、各折敷もちてまかづ、夫より譜代の中少将侍従四位の人々ひとり〳〵出て、折敷お持てしぞく、此間暑によりて入御あるの旨お、宿老より列座の面々に伝ふ、二間まで渡御有てのち入御あり、譜代外様の大小名、百の司々番士同朋のたぐひに至る迄、或は五人、あるは九人ひとしく出て、彼の折敷おもちてまかづ、