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諸国図会年中行事大成
四六月
十六日嘉定喰〈〇中略〉 今日公家武家嘉定の御祝あり、所謂嘉定通宝十六枚おもつて、食物お買調へて服すれば、其家に福あり、故に今に至て其例にならふ、又嘉通と勝と訓近し、軍に勝の義に取て、特に武家吉兆銭とす、此日五色の団子、并に諸品の肴お、土器両箇に盛、各白紙おもつてつヽみ、水引おもつて是お結び、群臣に賜ふ等の儀有、是即十六銭おもつて、求得るの遺意なり、諸家も亦此儀あり、或は孔方十六枚、米一升六合お家人に与ふ、其人々是おもつて、雑品諸物お調て是お献ず、又土器に杉葉お敷、其上に大饅頭三箇お盛、杉原紙にてこれおつヽみ、凡て物毎に十六の数お用ゆ、今夜諸家の中十六歳の人、振袖お切て詰袖とす、其土器にもる大饅頭の正中に穴お穿ち、其穴より月お見る、これお月見といふ、今宵袖お留るの式なり、