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万葉集
八秋雑
山上臣憶良七夕歌十二首
天漢(あまのがは)、相向立而(あひむきたちて)、吾恋之(わがこひし)、君来益奈利(きみきますなり)、紐解設奈(ひもときまけな)、一雲向河(かはにむかひて)、
 右養老八年七月七日応令〈◯中略〉
牽牛者(ひこぼしは)、織女等(たなばたつめと)、天地之(あめつちの)、別時由(わかれしときゆ)、伊奈宇(いなむ)〈◯宇恐牟誤〉之呂(しろ)、河向立(かはにむきたち)、意空(おもふそら)、不安久爾(やすからなくに)、嘆空(なげくそら)、不安久爾(やすからなくに)、青浪爾(あおなみに)、望者多要奴(のぞみはたえぬ)、白雲爾(しらくもに)、滴者尽奴(なみだはつきぬ)、如是耳也(かくのみや)、伊伎都枳乎良牟(いきづきおらむ)、如是耳也(かくのみや)、恋都追安良牟(こひつヽあらむ)、佐丹塗之(さにぬりの)、小船毛賀茂(おぶねもがも)、玉纏之(たままきの)、真可伊毛我母(まかいもがも)、朝奈芸爾(あさなぎに)、伊可伎渡(いかきわたり)、夕塩爾(ゆふしほに)、伊許芸渡(いこぎわたり)、久方之(ひさかたの)、天河原爾(あまのかはらに)、天飛也(あまとぶや)、領巾可多思吉(ひれかたしき)、真玉手乃(またまでの)、玉手指更(たまでさしかへ)、余宿毛寐而師可聞(よいもねてしかも)、秋爾安良受登母(あきにあらずとも)、
  反歌
風雲者(かぜくもは)、二岸爾(ふたつのきしに)、可欲倍杼母(かよへども)、吾遠嬬之(わがとほづまの)、事曾不通(ことぞかよはぬ)、
多夫手二毛(たぶてにも)、投越都倍伎(なげこしつべき)、天漢(あまのがは)、弊太而礼婆可母(へだてればかも)、安麻多須弁奈吉(あまたすべなき)、
 右天平元年七月七日夜、憶良仰観天漢、