[p.1272]
守貞漫稿
二十七
盆灯籠〈◯中略〉
今世は三都ともに、七月朔日より晦日に至り、灯お点じ、又八月も三日迄継之お、無縁法界の為也とし、又京師にて、或は明智光秀の為と雲は、逆賊なれども、京都の地子銭お免ぜし報恩の意お雲也、精霊棚に供ず、灯籠一年限麁制也、京坂白紙、江戸は蓮お画く多し、大坂にては、毎戸必らず図〈◯図略、下同、〉の如く挑灯に記号お一面黒、一面淡墨に描たるお用ふ、小戸にては小挑灯お用ふもあり、小提灯は格子内につり、下図の如きは戸口の軒に釣る、江戸は図の如き白張挑灯お用ふお本とす、然れども二三十年漸くに他の小提灯、或は灯籠、種々の形なるお用ふ、然ども巨戸は今も専ら此白はりお用ふ、中以下も当年死亡ありし家には用之、上下の花形お、紙お二重にす、白のまヽお専とし、或は六字名号、或は南無妙法蓮華経等お書もあり、今世普通は下図の如き小挑灯に、彩色の絵おかきたるお用ふ、或は同制の棗形おも用ふ、京坂にて隠宅、或は女主の小戸等の用ふ物も、是と同制也、盆灯籠、盆挑灯には蝋燭お用ひず、下図の如きひやう燭と雲るお用ふ、木綿太糸お以て灯心に代る、三都とも用之、江戸も昔は切子お用ひしが、中古以来廃し、今希に用之、又切子に非る種々の形も今往々用之、