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諸国盆踊唱歌

此さうしは、寛文の頃、後水尾院諸国に勅して、盆踊の唱歌お集め給ひしものなりとて、今より二十年ばかりさきに、友人の許よりかりえたりしが、其刻は何のこともなくて写しとヾめず、其のち見まくほりすれども、彼友も亡たれば、更にせんすべなかりしが、今又不意此写本お得たり、御撰なりといふが、たヾいひ伝ふるのみにて、その虚実は不知、
いたこ出島雲々の歌は、むかし見しさうしには無し、後人の書加へしものなるべし、そのほかもなほ近くおもはるヽ歌あり、よく味ひて新古お分つべし、
  文政乙酉六の朔          柳亭種彦