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日本歳時記
五八月
十五日、中秋といふ、秋九十日の最中なる故なり、〈◯中略〉今宵は秋の最中にて、殊に月お賞する故に、月夕とも、三五夕ともいふ、歌人騒客の晴お期する夕なり、林羅山野槌にいはく、今夜月お玩ぶ事、大かた李唐の世より盛にして、詩人文人其詠おほしといへども、古楽府に霜娥怨の曲あり、漢人の中秋の月なきによりて、此曲お作るとある時は、漢の世よりもある事にや、又もろこしには、今宵餅お製して、いろ〳〵の状に作り、月餅と号して相おくり、又月餅、西瓜等お食して、看月会おするよし、月令広義にみへたり、