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古今要覧稿
歳時
八月十五夜 八月十五夜の月お賞すること、島田忠臣の集にはじめて見えたり、その年記さだかならずといへども、斉衡三年詠史百四十六首お奉り、貞観元年調三百六十首お奉れるよし、家集の自注に見えたれば、その時代大概しられたり、そののち貞観六年八月十五日、菅原是善卿後漢書の竟宴せし時、聖廟の作られたる序に、満月光暉咸陳中庭之玉帛とあれば、その宴夜に及びしこともしらる、〈本朝文粋〉また聖廟の八月十五夜、望月亭にて桂生三五夕といふことお賦させ給ひし時は、紀納言詩の序おかけり、〈同上〉大内にて賞し給ひしは、醍醐天皇の延喜九年なり、〈同上〉仙洞にて賞し給ひしは、寛平法皇の亭子院にて行はれし時、菅原淳茂の詩序かけるや〈同上〉はじめならん、歌は貫之、躬恒、素性法師などのおはじめともいふべきにや、〈貫之集、古今六帖、〉林道春は、古楽府の霜娥怨お引て、西土にては、漢の代よりもありしにやといひて、されど盛なりしは、李唐の代よりなりと〈野槌〉いへり、