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守貞漫稿
二十七
八月十五夜、賞月俗に月見と雲、
三都ともに今夜月に団子お供す、然れども京坂と江戸と大同小異あり、江戸にては図〈◯図略、下同、〉の如く、机上中央に三方に団子数々お盛り、又花瓶に必らず芒お挟て供之、京坂にては芒及び諸花ともに供せず、手習師家に此机お携へ行き、此引出し、筆、硯、紙、手本等お納め、京坂の如く別に文庫お携へず、京坂にても机上三方に団子お盛り供すこと、江戸に似たりと雲ども、其団子の形、図の如く小芋の形ちに尖らす也、然も豆粉に砂糖お加へ、是お衣とし、又醤油煮の小芋とともに、三方に盛ること各十二個、閏月ある年には十三個お盛るお普通とす、江戸の俗、今日若他に行て酒食お饗さるヽ歟、或は宿すことあれば、必らず九月十三日にも再行て今日の如く宿す歟、或は酒食お饗さるヽこととする人あり、不為之お片月見と雲て忌むこととす、俗諺の甚しき也、片付身と雲ことお忌なるべし、此故に大略今日は他家に宿らざることとす、    ◯