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公事根源
九月
重陽宴     九日
昔は天子南殿に出御ありて節会お行はる、〈◯中略〉群臣に菊酒お給はり、大かたは五日の節会に同じ、御帳左右に茱萸の嚢おかけ、御前に菊瓶おおく、または茱萸の房お折て頭にさしはさめば、悪気おさるといふ本文あり、むかし費長房といふ仙人、女南の桓景にかたりていはく、九月九日なんぢが家災有べし、茱萸の囊おぬいてひぢにかけ、山にのぼりて菊酒おのまば、この災きゆべしと申ければ、其日にいたりて、おしへのごとくせしかば、その身はつヽがなくして、家中の鶏犬羊こと〴〵く死たり、かやうのくのう侍るによて、けふは菊酒おのむといひつたへたり、