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古今著聞集
十九草木
天暦七年十月十八日、殿上の侍臣左右おわかちて、おの〳〵残菊お奉りけり、主上〈◯村上〉清涼殿東の孫庇南の第三間に出御、王卿東の簀子に候、仰に雲、延喜十三年侍臣献菊、かの日隻左衛門藤原定方一人候、仍不相分左右、至于今日数人已候、可相分とて、右大臣、〈◯藤原師輔〉大納言源朝臣、〈◯高明〉参議師氏朝臣三人お左方とす、大納言藤原朝臣、左衛門頭藤原朝臣二人お右方とす、左菊いまだ仰かうむらざるさきに弓場殿にかきたつ、其後召によりて御前の東庭にまいる、洲浜に菊一本おうえたる、蔵人所衆六人してこれおかく、仁寿殿の西の砌にしの辺に、兵衛府の円座一枚おしきて、殿上の小舎人一人矢三おもちて候、洲浜の風流さま〴〵なり、