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年中恒例記
十月十日、のせ善法寺、当月亥日ごとに進上之、御台様へも参也、 今月亥日ごとに御厳重各拝領之、公家、大名、外様衆、御供衆、御部屋衆、申次衆、番頭、節朔衆、走衆、上池院等也、 亥日次第事、御対面所に御出座の面(みきり)、禁裏様御厳重お伝奏持参、則御頂戴之次、申次面々と申入て、三職はじめて御相伴衆は、大名一列に御前へ被参候て、御亥子の餅すはり御膳二膳参候て、御相伴衆次第頂戴ありて被参也、其次国持衆、此外正月一日数御盃お頂戴之人数被参候て、後二膳参候内、一膳御とふりへ被出候て、常外様衆被参候て、此御膳おばあげられ候て、又別に一膳参候て御供衆、申次、番頭以下、節朔衆、走衆、御薬師上池院迄参候て、其次公家と申入て、公家官位次第に被参也、御部屋衆は御供衆後に被参候哉、是は伊勢肥前守盛富説也雲々、 昔は禁裏様御厳重は、公家衆被参候時、伝奏持参候て御頂戴也、近年は先一ばんに御頂戴と也、 御厳重包様事、三色に在之、一には絵、二には切箔、三には白紙也、先絵のつヽみ紙の事、角の折敷に物の葉お敷て、御厳重お一すえて絵かきたる引合にて包、〈つヽみ様口伝在之〉其上お白引合にてうはづヽみあり、香包の様に包也、此うはづヽみに給人の名お書也、次切はくの事、仮令絵書所に絵はなくて、切薄たるかはりばかり也、こしらへ様は絵に同、次に白紙事、仮令絵書所之絵おもかヽず、切はくおもせず、白紙にて包也、白紙のには、うはづヽみと雲事なし、うはづヽみなき間、名書もなき也、絵切薄のごとく、角に葉お敷、御成きり一すはりてつヽむまで也、 三職計常角にてはなくて、大角にすはる也、三職女中同前、又三職以下こと〴〵く上包に名書あり、但仁木にかぎりて名書無之、 御厳重の下に敷く葉事、一番の亥には、しのぶと菊、〈花たるべし〉二番の亥には、しのぶと紅葉楓、三番の亥には、しのぶと鴨脚の葉お敷也、絵にも如此、一番にはしのぶと菊、二番にはしのぶと紅葉、三番にはしのぶと鴨脚お、泥白でいにて書也、又切薄も銀薄にてする也、 つヽみ紙以下用意事、中臈衆の役也、うはづヽみの名書は、上臈の役也雲々、絵切箔などは、土佐調進上之、御成切は〈きんとんの様なる餅也〉御美女方より参、諸下行は亥子がけと雲て、倉役お相懸、以納銭被仰付之、 番方へ御厳重出事、杉原にて御厳重お二十も卅もつヽみて、御四方おうちかへし、うらへ此五包お銘々に入て、五け番へ一膳づヽ出也、此つヽみ候事も、番頭へ渡事も、会所同朋之役也、これも菊、紅葉、鴨脚など、時々の物お敷べき也、又番頭義は、その番々の月行事へ渡也、 大名の被官衆へ御厳重出様事、めい〳〵には無之、角に葉お敷て、御厳重お十五も二十もひとつに入て、其上お白引合にてつヽみ、総中へ一つヽみ出也、つヽみやうは、まづ御厳重お引合の中に置て、引合おうち合て、あとさきおしかへしたる計也、これお中臈衆調之、 禁裏伺候女中衆十人、絵上壱名書無之、但十人にかぎらず、御所々々様、転法輪三条殿、 花山院殿 大名衆 同大名女中 松梅院 和泉守護 三条西殿 日野殿 八幡善法寺 右絵也、上包在之名書有之、 御紋候御供衆 同御供衆 両伝奏 飛鳥井殿 万里小路殿類 早輪院 そくりん院 かみ〴〵御部屋衆 摂津 以下評定衆 右切薄也、上包在之、名書有之、 右筆方法中医者 在富卿 正実坊 河村中興〈伊勢被官〉 同朋御末同朋 土佐 伊勢同苗 佐々木七郎 右_紙也、上包名書無之、 仁木切箔うはづヽみ有之、名書無之、 名書の下に殿文字かくと、かヽさるとの事、武家にては御紋候大名、同御供衆、同外様衆、御部屋衆、殿文字有之、御紋候といへ共、番方衆 不及沙汰候、大名たりと雲共、御紋の衆にあらざれば、殿文字無之、公家衆はこと〴〵く不残殿文字有之、御所々々かみ〴〵皆殿文字有之也、