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追儺は、おにやらひ、又なやらひと雲ひ、字音にてついなと雲ふ、十二月晦日の夜、禁中に於て悪鬼お駆逐するの儀式なり、其式は、大舎人の身体長大なる者一人お取りて方相氏と為し、是お大儺と雲ふ、方相氏は黄金四目の仮面お被り、玄衣朱裳お著し、右に戈お執り、左に楯お執る、又官奴等二十人お以て侲子と為し、是お小儺と雲ふ、侲子は紺布衣、朱末額お著して殿庭に列立す、陰陽師先づ祭文お読む、訖て方相氏儺声お作し、戈お以て楯お擊つ、侲子之に従ひ、親王以下桃弓葦矢桃杖お執り、相和して以て悪鬼お逐ふなり、中世以降其制漸く頽れ、殿上人等、桃弓葦矢お以て方相氏お射る等の事あるに至れり、
又大寒の日の前夜に、宮城門に土牛童子の像お立つる事あり、疫気お駆るが為なり、