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後水尾院当時年中行事
上十二月
節分ちらし、あぶらお供ず、夕方つねの御所例の御座にて御さかづき参る、先芋〈かはらけ二に入〉お供ず、次にまめ〈かはらけ二つに入〉お、次におりびつ二つ、まめお入て三方にすえてまいる、はいぜん三方ながら御前にさしよす、おりびつ二つのふちお合せて、二つながら御左の手にとらせ給ひて、おりびつ二つの中なるまめのうへにおほひたるかはらけお、右の御手にてとらせ給ひ、豆お柄の方へ三度うたせ給ふ、柄の方もし御うしろの方ならば、御うしろざまにうち給ふなり、打おはらせ給ひて、三方におかせ給ふ、はいぜんとりて勾当につたふ、勾当このおりお左の手にてとり、右の手にてうしろざまに立ながら、一まに三度づヽうちて、御殿中御ゆどのヽうへまでおうちめぐる、此間にかはらけに入たるまめお御としの数参る、勾当かへり参りて、かうろに追儺香おくゆらしてもて参る、かヾしめ給ひて返し給、女中次第にとり渡してきく、其後勾当の内侍、又御殿中お持てめぐる次第にてうじ出す、御盃まいりて一献とほる、御前おてつして、さけなほしめさしまして、御方たがへになり、ないし、しよくお持て御さきへ参る、次に勾当ひとへぎぬ著て、剣おもて参る、御後には女中襠ばかりきて、ひるまうけの所にいらせましまして三献にいたる、三献め天酌にて女中おとこ御とほしあり、御前おてつして、殿上人御鳥三声の後還御、勾当御やく払〈まめ御としの数、鳥目御としの数、引合一かさねにおしつヽむなり、〉もて参る、御身おなでられて返さる、給はりてうしろおかへりみざるやうに退く、故実とす、