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世諺問答
十二月 問て雲、せつぶんのまめうつ事は、何のゆへにてかはべる、 答、としこしと世俗にいひならはして、こよひは悪鬼の夜行するゆへに、禁中にも、むかしは陰陽寮さいもんおよみて、上卿已下これおおふ、御所にともし火おおほくともして、四目ありておそろしげなる面おきて、手にたてほこおもて、内裏の四門おまはるなり、また殿上人ども御殿のかたに立て、桃の弓蓬の矢にていはらふ也、これらおかたどりて、まめうちて鬼おはらふ事はじまれるにや、此内裏にて鬼おはらはれし事は、慶雲二年十二月、百姓おほく疫癘になやまされしゆへに、はじめられたるよし承およびし、