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甲子夜話
二十三
節分にも、御坐間は老中方豆打お勤めらる、尋常の如く、高声に鬼は外、福は内などは言はず、たヾ御上段の塗縁に豆お三処に置き退かる、これお豆おはやすと雲ふ、但し置くとき祝文お唱へらるとなり、〈余録〉又節分の日は、世に胴揚とて、歳男おつとむる者お、婦女打寄りどうに揚る、大城の大奥にては、御留守居その役おつとむ、其事畢ると老女衆列坐ありて、御祝儀につき胴揚いたすと申達ありて、女員打より胴に揚るとなり、予が大叔父松浦越前守御留守居勤役したりしときの物語なり、