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歳時故実大概
十二月
一節分〈立春の節の前日なり〉今宵門戸に鰯のかしらと柊の枝お挿て、邪気お防ぐの表事とし、〈◯中略〉鰯頭〈并〉柊お門戸に挿事は、事文類聚に、月令、季冬之月、大儺傍磔と有に習へるもの歟、〈傍磔とは、傍とは四方と雲事にて、磔とは張り四の儀なり、是追儺の時に用る畜獣の属お、四方の門戸に磔り四して、邪魅陰精お攘ふの表事とする事なりといへり、〉往古は鰯のかしらにもかぎらずと見えて、貫之が土佐日記に、小家の門の端出縄、鯔のかしら柊などと有、但し柊さす事は、いかなる拠にや考へ得ず、〈或説に雲、土地によりて柊おさヽず、とべらと雲木の枝おさす所あり、とべらと雲は、扉の転音なり、此木はもちの木に似たるものなり、元来此木右のごとく門戸にさすもの故に、倭訓お扉の木といへるよしなり、〉