[p.1418][p.1419]
俳諧歳時記
十二月
餅搗 糯米洗、もち花、 長崎の柱餅、肥前国長崎にて、としの暮の餅搗の日に、終りの一臼の餅お家の柱へまき付おき、正月十五日、左義長の火にてこれお炙りて食ふなり、これお柱餅といふ、このこと西鶴が世間胸算用といふ草紙にもしるしたり、又豆州下田より一里ばかりに、中の瀬といふ所あり、この所の鎮守お、ねのひじり権現といふ、この神餅お忌嫌ひ給ふとて、中の瀬の人、年の暮に餅おつかず、元日焼飯に菜お入れ、羹として雑煮の代に祝ふ、是お餅搗ぬ里といふべし、