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塵塚談

浅草観音の市、十二月十七十八両日也、諸人正月のかざりの物お吉凶おいはひ、此市にて求る事なり、外に江戸に市なし、故に並木町より雷神門内までは、老人小児の通行思ひもよらぬ事にて、俳句に、市の人人より出て人に入る、といふ句も有しに、近ごろに至り、神田明神、深川八幡、芝愛宕、麹町天神に市はじまり、人も相応に出て賑かなり、麹町はわけて群集なすよし、其故にや近歳観音の市、先年よりは淋しきやうに見ゆる、