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除蝗録
総論
偖其享保子年〈◯十七年〉の凶作といふは、前年亥冬、寒気うすく気候不順にして、子年に至り春雨しげく、其後しば〳〵照、又五月末より閏五月の下旬迄、霖雨昼夜おわかたず、六月初旬より漸やむといへども、気候陰冷にして暑うすく、又中旬にして白雨度々あり、其頃より蝗生じ、稲の茎お喰枯しぬ、於是諸国一統凶作して、飢饉に至る所多く、身うすき農民は、うえしするものすくなからず、此事書にも伝はり、古老の口碑にも残りて、聴も中々浅間敷事共なり、