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著作堂一夕話

富士の農男并浅間の弁 享和壬戌夏五月、囊お担杖お曳、ゆき〳〵て駿河の府中にあそぶ、彼地の人の説に、四五月のころ、富士の雪やヽ消残たるが、宝永山の辺、凹なるところに、人の形のごとく雪の残ることあり、これお農男と名づく、この残雪見ゆる年もあり、又みえざるとしも有、田子の土人雲、農男見ゆる年は、かならず五穀熟すと、〈◯下略〉