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農稼肥培論

豆腐粕〈からと雲、又きらずといへり、九州にてはとうふの花と雲、又とうふの粕といふところあり、〉 飢饉の時は、此雪花菜(きらず)壱升に葛粉〈山より堀製せしまヽ晒さざるなり、是お灰葛(はいくず)といふ、〉壱合程入、よくこねまぜ、たぎる湯にて団子のごとくこねて、片手にて握りて、鍋に味噌汁おこしらへ置、其中へ蘿蔔或は菜の干葉等お入煎(に)て、其たぎる中へいれて、よく煎えたるお試て食するに、美味(うまく)して飢おしのぐに足れり、肥しの事にあらざれども、備荒の助ともならんと、次序に記し置ぬ、是は天明の凶年に、予が試たる事也、