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救荒事宜
草木おもて食とする事 水府の佐藤平三郎といふ人、物産に精しき名あり、先達而出会し時、救荒の事お談ぜしに、佐藤いへらく、草根など堀り食ふても、人の腹にたまるものは少し、天明の凶年、余会津にて民どもにおしへて、山林にゆきて、あらゆる木葉お鎌にて芟り来り、湯引て食料とせしむ、それのみにてはやはり腹のもちあしき故、猪鹿の類お打取り、その肉お鰹節のごとく切りて乾し置き、右の木葉の内にけづり込て喰はしめて、飢お救ひしとまうしき、いかヾあらん試むべし、